さとりのしょ!!「続・彼の道は神のみぞ知る」

勉強ができない少女がいた。彼女の名前はユウキ。勉強ができない代わりに、スポーツが万能であった。   そんな彼女が恋をしたのは、勉強もスポーツもできる男子だった。ユウキは、初めて男子にスポーツで敗北を喫したのだった。   そんな彼は、自分の才能をひけらかすことなく、自己鍛錬に明け暮れていた。ユウキは、そんな彼の事を好ましく思っていて、恋愛に発展するまでに時間はかからなかった。   恋愛に発展してからも、ユウキは彼氏の事を大切に思っていた。彼氏もまた、ユウキのことを大切に思っていた。相思相愛を具現化したかのような、そんな間柄だった。   しかし、いつしか時間が流れるとともに、価値観に相違が出てきたのだ。彼氏は、ユウキに勉強を強いるようになった。弁解すると、これは彼氏の気持ちだ。「同じ大学に行きたい」という幼稚な考えだった。   一方、ユウキは「遠距離恋愛も厭わない」姿勢だったし、彼氏の事を信じる気持ちは十分にあった。しかし、ユウキはそのことを伝える方法を知らなかったのだ。   いつしか、二人は連絡を取らなくなり、自然消滅してしまった。彼氏が二流の大学に入ったことを喜んだものの、ユウキは自分と元恋人を比べることなく、ユウキ自身の道を進み続けた。歩み続けたのだ。   その後、ユウキはアスリートとなることができた。たゆまぬ努力の成果もあり、ユウキは名のある大会で優勝することもできた。   やがて、ユウキはその発言の面白さから芸能界に入ることができた。様々なテレビ番組に出演し、しかもスポーツでも結果を出すことができた。   やがて、ユウキにも考えるところが出てきた。スポーツの引退だ。年齢を言い訳にする前に、自分から身を引こう、あとはユウキ自身よりも若い世代に任せよう、と、尊厳ある引退を選んだのだった。   その人柄もあり、ユウキはバラエティ番組に多数出演することができた。その時に、昔、過去の事を話す機会が与えられた。もちろん、ユウキにとって唯一の彼氏の事を話した。   ユウキが、こうして放映される番組において、元恋人の事を話していると、懐かしい気分になった。ユウキは、実際に積極的な性格であったので、母校に立ち寄ったりなどしていた。   元恋人の姿が、あるはずもなく。ただ、元恋人を良く知る教師と会うことができた。その教師は、かなりの老齢だったが、テニスを教えていた。   「先生、体系は尖ってきてるのに、性格は丸くなってる」 「バカめ、そういう歳なんだって」 「ふふ、懐かしい」 「そういやお前、陸上でメダルだって? すげえなあ」   懐かしい過去や、現在について話している。しかし、ユウキが話したいものとはどんどん逸れていく。ユウキは、この期に及んで元恋人の事が聞けずにいた。   だが、やはり老練ともなると、直感の鋭さが際立つものである。   「タクロウか、懐かしい。俺に恋愛相談をしてきたんだ、お前のな」 「えっ、あたしの……」 「お前は運動だけは出来るからな。それに負けん気が強い。努力家のタクロウなら、お前のことだって簡単に引っこ抜くと思ってたよ」 「あは、あはは……実際、そうなんでしょうね……」 「今じゃ、頑張りすぎて精神科通いだそうだ……かわいそうにな」   ユウキの胸が、張り裂けそうになった。教師から精神科の場所を聞くと、雨の降りそうな天気の中、歩き出した。そして、走り出した。ユウキは、まだ衰えていなかった。   衰えを感じているのは、元恋人の方である。妻に付き添われ、今にも精神科の扉を開けようとしている。ユウキが、二人に迎えられるまで、あと僅かの事だった。     (了)