さとりのしょ!!「あなたへ」

「あなたへ」     拝啓。手紙のさほーってよく分からないのでとりあえず拝啓って付けておきました。背景って書くのかもしれませんが、どっちでもいいかなって思いました。てがみっていうのは気持ちだよ、と君が教えてくれたのですから。   何度も何度もお伝えしました。僕はあなたのことが好きです。聞き飽きたでしょうし、現に君は「聞き飽きたよ」とわらっていました。かわいい笑い顔でした。   その笑い顔が好きでした。君の笑った顔が好きでした。君の喜んだ顔が好きでした。君の悲しんでる顔も好きでした。だけど、できるだけ悲しませたくはないなあ、とも思っていました。これは本当の事です。   君が遅く起きて、僕が作ったベーコンエッグを食べている時の、眠たそうな顔も好きでした。あなたはもういなくなってしまったから、あの笑顔も悲しんだ顔も眠たそうな顔も、もう見られませんね。   でも、僕の中にはあなたが、君が生きています。今も生きています。あなたは遠くへ行ってしまったけど、僕はあなたのことを忘れませんし、ずっとずっと思い出して、片時も忘れないようにしたいと思います。   こうして文章にするととても恥ずかしいのですが、いっそ溢れる想いなら溢れさせないで全部まるごと届けたいと思います。でも、やっぱりちょっと恥ずかしいなって思いました。   あなたは覚えているでしょうか。この手紙を書く前の事です。君と一緒にどこまでもいこうと、自転車をこぎ続けた夏の日の事です。蚊に刺されて、自転車で転びそうになりながらどこまでも行こうと笑いあった日の事です。   結局、県外に出ることもできずに港で一緒に釣りをしました。君は釣り竿を持っていなかったので、落ちていた乾燥してしまっているヒトデを海に放り投げて遊んでいたのを覚えています。あの腐った臭いも、今では笑い話になると思います。   本当にあの頃は楽しい日々でした。いつまでもいつまでも、あんな幸せな日々が続くのだと思っていました。   今ではこの手紙こそが笑い話なのかもしれません。もう二度と君の、あなたの笑顔を見ることができないのです。なんと悲しい事なのでしょう。この手紙も、今、所々濡れてしまっています。   どうしてこんなことになったのか、と思うことがあります。女々しいなって、自分でも思います。でも、もう少しだけあなたのことで感傷に浸らせてください。あなたとの日々はとても素晴らしいもので、輝かしいもので、愛おしいものだったのですから。   とても、深く感謝しています。何度目の「好き」か、今となっては数えきれないのですが、これからも何度も僕はあなたに伝えます。   僕は、あなたがだいすきです。あいしています。どうか、僕を幸せにしてください。   この手紙は、必ずあなたに届けます。届ける方法が一つだけあるのです。それは、この手紙を燃やすことです。あなたは天の上、更にその上、宇宙の果てよりも遠くにいるのです。だから、燃やしてどこまでも高くのぼる煙に預けてしまおうという、そういうことをしようと思っています。   ありがとう。本当にありがとう。君のおかげで、僕は幸せです。とてもとても感謝しています。   そろそろ手紙が血で読めなくなってきているので、これで終わりにします。あなたで作ったカレーはまだ残っています。おいしいカレーです。いつまでも食べていたいと思いました。でも、腐ってきてしまっては美味しさが消えてしまいます。   あなたのことは、僕が大切に食べます。おいしいおにく、こんなにおいしいおにくは久しぶりなのです。   きっと、僕はまた誰かを食べます。たくさんのひとをたべます。浮気をしてしまうことを、許してください。でも、あなたのことも愛してましたからね。   それでは、さようなら。       (了)