さとりのしょ!!「どこかの高速道にて」

「どこかの高速道にて」     「わりぃな、疲れてんのに運転してもらっちまって」 「あぁ、まぁな。すぐそこだろうから気にすんな」   タカシとユウジがドライブをしている。目的地までどれくらいかかるか、運転しているタカシには、正直なところ分からなかった。だが、運転を引き受けてしまった以上は到着しなければならない。   助手席でユウジがいびきをかいていた。気楽なものだ、とタカシは思う。こうしてゆっくりとしていられるのだから、到着したらラーメンの一杯でもおごってもらおうだとか、そんなことを考えていた。   ずっと、ずうっと高速道路を走り続けている。延々と走り続けている。パーキングエリアも、もちろんあった。だが、タカシは休むことなく運転を続けた。次第に視界がぼやけていく。眠るわけにはいかない。休むわけにはいかない。ここで油断してしまえば大事故になる。   ユウジのいびきが癇に障る。高校からの付き合い、それも腐れ縁で大学も会社も同じである唯一無二の友人であるのだが、距離が近いだけに嫌いな部分もあった。当然、当人を丸ごと好きになる必要はないし、そんなことは不可能であろうが。   (コイツほんっと気持ちよさそうに寝やがって……チャーシュー追加だな) (ホント、ホンットに次のパーキングで休むぞ……休むからな……) (これ左だったか……次のでいいか……)   いくつものパーキングエリアを見逃し、気づけずにここまで走り続けた。ガソリンはあるようだが、気力が足りない。体力が足りない。これでは目的地に到達したとしても、遊ぶ力など残っていないだろう。タカシは、それでもハンドルを放さなかった。手放すわけにはいかないのだ。   こうして走り続けて、どれだけ経っただろう。気分転換に音楽でもかけようとカーラジオのスイッチを入れようとし、スイッチを押そうにも車内が暗くてよく見えない。高速道路も然り、ライトが照らす数メートル先がようやっと見える程度、あとは路肩に設置されている反射板なんかが光っているだけだ。   ずっと走り続けていると、不安になる。こうしてこの道を進んでいるだけでいいのか。この道で間違いがないのか。一度不安になると、どうしても頭から不安は消えない。引き返すべきなのか、どこかで一時停車するべきではないのか。そんな雑念が浮かんでしまう。   (そうだ、これは雑念……俺は大丈夫、この道を進むだけで、それだけでいいんだ……) (それにこれは高速道じゃないか、道を間違うなんて……) (俺は……俺は、いったいどこに向かってるんだ……どこに……)   ユウジが目を覚ました。タカシのことを不思議そうに見つめていた。のんきな欠伸をひとつ、ユウジがぼそりと呟いた。   「次、パーキング二キロ先な。休もうぜ」 「あ、ああ……でも……」 「いいから。そういうのいらねーって」   ユウジの案内通り、タカシは無事にパーキングエリアに入ることができた。タカシが深く息を吸い、様々なものと一緒に空気を吐き出す。それを何度か繰り返す内に安らぎが戻ってくるのを感じた。   「疲れてんのに運転なんかするんじゃねーよ。俺まで死ぬだろ」 「………………」 「大丈夫、お前が疲れてるのは分かってる。そういう時のための助手席だろ? あとは俺に任せな。お前は十分に走ったよ」   タカシの息が少しずつ浅くなっていく。夢と現実の境が薄くなっていく。到着したら、きっと希望の朝日が見られることだろう。疲れだって、そこそこに癒えていて、旅先の食事や観光が楽しめるはずだ。   長い高速道路、運命を握っているそれら。途中で降りることもできよう。これを読んでいるあなたは、一体どこまで走るつもりだろうか。願わくば、事故のない安全運転を。     (了)